【 綺麗なお姉さんは好きですか? 】
◆LBPyCcG946




28 :綺麗なお姉さんは好きですか?1/7 ◇LBPyCcG946:08/10/12 18:20:22 ID:9UHoRDNM
 大理石に囲まれた浴室で、俺は湯船に身を任せていた。銭湯かと見まごう程の大きい風呂だが、富士山は描
かれておらず、置いてあるシャンプーやらシャワーカーテンには高級感が溢れている。まさにここは天国だ。
いや、正確に言うなら天国にたどり着く一歩手前だ。
 目を瞑り、両手を前に出す。手のひらは広げるでもなく握るでもなく、5本の指をくねくね、もみもみもみ
もみ……おっといかんいかん、想像しただけで興奮してきた。あのなめらかな肢体が後もう少しで我が物にな
る。潤いに満ちた唇も、艶かしい視線も、心震わす吐息も全て、一時の間は俺の物だ。これぞ人生最上の喜び。
18歳まで童貞を貫き通した甲斐があった物だ。俺は何度も神に感謝する。
 きっかけは数週間前、ひょんな事だった。俺は高校を卒業して、進学も就職もせず、家で悠々自適にニート
していた。その日の事は良く覚えている。朝は晴れていたのに、昼あたりから雲行きが怪しくなり、夕方には
もうどしゃ降りになった日だ。父に「働かないならせめて駅まで傘を持って迎えに来るぐらいの事はしろ」と
の電話をもらい、渋々家を出たのだ。
 そしてその道中、俺は運命の出会いを果たしてしまう。軒下で雨宿りをしている美女、いや天女。神の使い。
ていうか、女神そのもの。年齢は20前半くらいに見え、CanCamの表紙を飾ってもおかしくない。年上が好み
の俺にとっては、まさにストライクストライクストライク、バッターアウト、チェンジ。
 この機を逃せばこの世に生れ落ちた意味が無い。衝動にかられた俺はすかさず駆け寄り、こう言った。
「傘、よろしければどうぞ」
 そのお姉さんは一瞬たりとも俺に戸惑う素振りを見せず、悪戯っぽい笑みを浮かべてこう言った。
「その傘、お父さんのでしょ?」
 どうして分かるのだろう。とその時は思ったが、今冷静に考えてみれば、自分は傘を別に持ってさしてるし、
渡した方の傘は無地の濃いベージュで、明らかに安いおっさんっぽい傘だ。俺は動揺してるのを悟られぬよう、
必死に取り繕いながら言った。
「でもどうぞ、使ってください。当分雨も止みそうもないですし、親父なんかハゲちらかってるから傘なんて
いらないですし……」
 変な事言ってしまったと自分でも思うが、出した言葉はもう戻せない。
「ふふ。君、面白いね」
 お姉さんが俺の言葉を聞いて笑ってくれた。その少し陰りのある表情に、俺の恋心は加速した。
「え? いや、はは、そうですか」
 と誤魔化してみるも、やっぱり大人の女性には敵わないんだな、改めて思い知る。
「でもそうね、君がそう言ってくれるなら、傘を借りてもいいかしら?」
「もちろんですとも!」また変な事を言った。笑われてしまった。

29 :No.07 綺麗なお姉さんは好きですか?2/7 ◇LBPyCcG946:08/10/12 18:21:15 ID:9UHoRDNM
 それからお姉さんは、傘を返す為にと言って、俺に携帯のメールアドレスを渡した。フランス語か何かの、
なんだか凄い上品なアドレスだ。俺は家に帰ってから1時間くらい「もらったその日にメール送るのはがっつ
きすぎか?」とか「でもメアド渡してくれたって事はちょっと自分に気があるのかも」なんて妄想を部屋に散
らかし、結局メールを送ってしまった。今度は当たり障りの無い、吟味に吟味を重ねた珠玉の文章だ。メール
はすぐには帰ってこなかったが、父の方は帰ってきた。ずぶぬれで、頭頂部はますます寂しい事になっていた。
 その翌日から約1週間、メールも程ほどに交わし、もう1度会いたくてたまらないといった俺の心境を察し
てか察してないのか、とにかくちょうど良く、お姉さんからのお誘いがあった。「ご飯でも一緒にどう?」な
んだか大人な響き。ドラマみてえだと思いながら、俺は快諾した。
 その日は本当にご飯だけだった。ただ、ホテルの中に店をかまえる物凄いおしゃれな所だ。待ち合わせがホ
テル前だったから、これはもしやと思い、一応一張羅を着ていったので助かった。お姉さんとする食事は凄く
楽しく、たとえ出てくる物が鯖の味噌煮定食であったとしても、味など分からず気付かずに食べた事だろう。
もちろん出てきたのは鯖の味噌煮定食ではなく、なんか良くわからない、皿の割りにちっちゃいやつだ。貯金
は一応全額下ろしたものの、足りるかと不安だったが、結局お姉さんが払ってくれた。
 食事は確かに楽しかったが、でも同時に、やっぱり俺ごときには手の届かない人なんだという事を実感させ
られた。聞けば、3ヶ月も前からこのホテルに泊まっているそうだ。お金をどうしてるのか、気になって聞い
てみたが、1回目の食事では教えてくれなかった。1回目という事には2回目がある訳だが、お姉さんの方か
らの誘い文句はただ単純に「会いたいから」だった。いや、俺の方が会いたいし。と思った事は言うまでも無
い。
 2回目の食事、いい加減緊張もほぐれてきて、ようやく俺はカタコトから脱出した。調子に乗って、自分を
少しでも大人っぽく見せる為、ワインを飲もうとしたら止められた。
「大人になってから、ね?」
 これが漫画だったら目がハートマークになってるが、しかしこれは現実だから、食事が終わったら眼科に行
かなきゃならない。
 そしてお姉さんは、その夜少しだけ俺に秘密を打ち明けてくれた。ちょっと異世界の話すぎて理解と整理を
するのに苦労したが、簡単に述べるとこうだ。

30 :No.07 綺麗なお姉さんは好きですか?3/7 ◇LBPyCcG946:08/10/12 18:21:39 ID:9UHoRDNM
 お姉さんはとある企業の社長の愛人であり、その社長とやらはここの近くの会社で働いているらしい。もち
ろん愛人っていうくらいだから、妻もいる人だ。さぞや金持ちなのだろう。きっと、お姉さんが俺とこうして
食事を共にしているのも、親父に飽きたから、そろそろ若いのを的な、おせちもいいけどケーキもね的な感覚
なのだ。そう思うと、どうにもくやしく、その社長とやらの鼻にニッパーを突っ込んで穴を1つにしてやりた
い衝動が込みあがってきたが、どうにかそれは抑えた。その代わり俺の口から飛び出した言葉は、ちょっとキ
ザで俺らしくなかった。
「その人を、あなたは愛しているんですか?」
 お姉さんは肘をつき、その繊細な指でそっと自らの唇をなぞると、やたらと透明度の高いガラス窓を通して
夜景を眺めた。街の灯りがお姉さんの瞳に映り、今にも奇跡を起こしてしまいそうだ。
「さあ、どうかしら」
 曖昧に答え、お姉さんは微笑んだ。
 それから1週間が、まさに今日だ。今さっきのやりとりなんてもうどうでもいい。簡単に言えば、また食事
してたら「部屋にこない?」なんて誘われて、もうその瞬間に俺は勃起してたってだけの話だ。今日はその社
長とやらが忙しくて来ないんだそうだ。
 いい加減、湯船に浸かっているのも限界だ。というか、さして長い間浸かっていた訳ではないが、風呂に入
る前どころかエレベーターに乗る時点で俺は完全にのぼせていたので、これ以上のぼせたら茹でダコになって
しまう。俺が湯船から出て、しっかり一物を磨きあげ、いざ戦場へと行かんと浴室のドアに手をかけたその瞬
間。
 ブー、という短い音が部屋に鳴った。来客? セールス? いや、ここはホテル。となれば高島政伸の可能
性が一番高いか? などと思考をあえて逸らしたが、一番やばいパターンはこうだ。あのベルは悪魔の鐘で、
これから悪魔が俺の魂を取りにくる。結果的に俺は全裸で外に放り出され、お姉さんとの一夜もお預けを喰ら
い、これから二度と会う事はない。さっきまでのぼせあがっていた脳みそから、血がナイアガラのように足元
へ下っていく。
 部屋からドタドタと足音が聞こえ、風呂のドアが開かれた。お姉さんが焦っている。いつもの余裕はなく、
長い髪をまとめてる途中だったのか、乱れているがそれもまたセクシー。
「あの人が来たわ。なんとかするから君はここに隠れてて」
 俺は突然の事に戸惑ったまま、返事をする暇も無く風呂のドアを閉められた。「あの人」といったらやっぱ
り「あの人」だろうか。不倫相手、金持ちのおっさん、いわゆる悪魔。俺は部屋の様子を伺うため、ドアに耳
をくっつけた。なんとかするからといったって、どうするつもりなんだろう。風呂の電気が消され真っ暗にな
り、ドアが開く音がして、誰かが入ってきた。

31 :No.07 綺麗なお姉さんは好きですか?4/7 ◇LBPyCcG946:08/10/12 18:22:10 ID:9UHoRDNM
「あら、今日はどうしたの?」
 お姉さんの声だ。演技がうまく、焦っているはずなのにその様子を微塵も感じない。
「がはは、仕事が意外と早く終わってな、お前の顔が見たくてきたんだよ」
 下品な笑い方をする男だ。外見を見た訳ではないが、お姉さんには似合わない事が分かる。
「そうなの。でも今はちょうどお化粧をしていた所なのよ。しばらく待ってくれない?」
「何? お前はそのままでも十分綺麗だろ。俺は疲れてるんだ、いいから部屋にあげろ」
 荒っぽい奴だ。風呂から飛び出して、必殺フルチンパンチを繰り出したい衝動にかられたが、お姉さんはそ
れを望まないだろう。2人は玄関口で少しやりとりをした後、結局部屋にあがってしまった。
 とりあえず、今日はお姉さんとベッドインする事は諦めた方が良さそうだ。とにかく今は、この親父に見つ
かる事なくやりすごし、また後日誘ってもらうしかない。そう覚悟を決めた瞬間、こんな声が聞こえてきた。
「よし、とりあえず風呂だ。俺は風呂に入るぞ」
 やばい、早速ピンチだ。
「ちょっとまって」お姉さんの声「お風呂は私が先に入ってもいい?」
 お姉さんとお風呂? うっひょー。とか思ってる場合ではない。
「いや駄目だ。俺は早く血を洗い流したい」
 思考停止。
「着替えはしてきたが、首元から奴の血が少し入った。臭いもとれねえし早く風呂に入りてえ」
 え?
「それにしても、斬られた時の野郎の顔、お前に見せてやりたかったよ、がはははは」
 ちょっと待った。もしかしてこの人、社の長っていうか、組の長なんじゃ……。
 俺は気付かぬ間に快速特急に乗り、緊急事態駅のホームに進入していた。バレたらお姉さんといちゃいちゃ
できない所の騒ぎじゃない。1人で息子ともいちゃいちゃ出来ない。東京湾で魚の一家を養い大黒柱になるか、
どこかの山の中で将来的に化石を目指すかしか俺の人生設計がなくなる。っていうかそれ俺死んでるし、沈め
られてるし埋められてる。
 俺は激しく後悔した。お姉さん綺麗なのは綺麗なんだが、そんな超強烈なリスクがあるなら隠さず言ってく
れよと、声を殺して泣いた嘆いた。
「さあ、風呂に入るぞ!」
 神よ、仏よ、サンタクロースでも何でもいい。どうか俺を助けてくれ。もしくは笹と短冊をくれ。
「待って、私も一緒に入るわ」
「お、どうした? そんなに俺が恋しかったのか? ん?」

32 :No.07 綺麗なお姉さんは好きですか?5/7 ◇LBPyCcG946:08/10/12 18:22:39 ID:9UHoRDNM
 地獄の全裸三者面談成立か。などと思っていると、お姉さんが大きな声でこう言った。
「あ〜そろそろシャワーカーテン! 変えたいなぁ」
 お姉さんにしてはめちゃくちゃわざとらしいヒントの出し方だった。だがおかげで俺にちゃんと伝わった。
シャワーカーテンの中に隠れて、やりすごせという意味だろう。組長さんが頭を洗っている隙を見て脱出し、
死を回避する作戦。俺はバスタブのふちに乗っかりシャワーカーテンにくるまった。思いっきり息を吸い込み、
腹を引っ込めカーテンになりきる。サンゲツサンゲツサンゲツ……カーテンになりきるためのドラゴラム的な
呪文だ。
 やがて運命の扉は開かれた。震えを抑え、俺はカーテンになる。
「……あ? なんかシャワーカーテン膨らんでないか?」
 ドッキーン。
「え? そんな事無いわ。疲れてるのよ。さあ、早く座って」
「お、おう」
 音がした。座ったようだ。
「いて、ちょ、いてえよ。目にシャンプー入ってるって」
「あら、ごめんなさい。目をつぶってて」
「ちょ、痛いって。目しか洗ってねえじゃねえか」
 今だ! っとシャワーカーテンから音も無く飛び出した。すると、お姉さんが組長さんを洗ってるというか
取り押さえていた。俺は早くここから出ねばと急いだが、男ってのはこういう時駄目だ。自分の命がかかって
るっていうのに、お姉さんの裸を凝視してしまう。何せ童貞、その上包茎。お姉さんは見られている事に気付
いているが、余裕が無いんだろう。恥ずかしそうにする素振りすら見せない。まあそれが逆に良いんだが、と
りあえず、出来る事なら目だけここに置いていきたいと思いつつ、ドアを開けようとしたその時。
「いてぇ!!」
 組長が叫んだ。俺の足元には、ぷにゃっとした変な感覚。……長っ! 組長さんの息子さん長すぎる! 二
代目か三代目かは分からないが、どう見てもキングコブラだ。取り押さえるお姉さんを強引に払いつつ、組長
さんが立ち上がった。組長さんが目をこすり、こっちを見る。
「誰だてめえ!」
 ば、ばれた。しかしよく見ると、組長の顔……。
「お、お父さんじゃないですか!?」
 俺は声をあげた。が、全然お父さんじゃなかった。うちの万年係長とは似ても似つかぬ、いかついお人。
「誰がお父さんだ? あん? てめえ誰だ」

33 :No.07 綺麗なお姉さんは好きですか?6/7 ◇LBPyCcG946:08/10/12 18:23:02 ID:9UHoRDNM
 感動の親子再会と言った風な演出で乗り切ろうと思ったが無理だった。俺がお姉さんに視線を送ると、お姉
さんは目を逸らした。その雰囲気を察してか、組長さん。
「はーん……そういう事か。どっちが誘ったんだ?」
 俺はお姉さんを指差そうかどうか迷った。が、お姉さんはノータイムで俺を指差してきた。畜生!
「まあ誘われてのっかちまうのもどうかと思うが、どのみちお前さんにお仕置きが必要な事に変わりはねえわ
な。ただでさえこっちは一物踏まれてるんだ。ただで帰れるとは思うなよ」
 俺の人生で、多分最高の土下座が完成した。綺麗なフォームで、全裸だからケツをパックリと割らせ、床に
こすりつけるように頭を垂れた。これからも良い土下座をしていきたい。だから生きたい。そう願う。
「すいませんすいませんすいませんすいません……」
 俺の口から高橋名人ばりの連打が飛び出したが、それもむなしく、組長さんが拳を鳴らし、地獄のハーモニ
ーを奏でてらっしゃる。ああ、俺はこれからボコボコにされた挙句、道路標識を尻の穴にぶっさされ、面白画
像を撮られた挙句捨てられるんだ。そんな考えが頭をよぎった。その時!
「……なんちゃって!」
 俺が頭をあげると、そこには「ドッキリでした」と書かれたプレートを持った組長とお姉さん。
「誕生日おめでとう! ハッピバ〜スデ〜トゥ〜ユ〜」
 組長の、スティービーワンダーばりの美声が聞こえ、部屋の奥から俺の友人達がわらわら出てきて俺を見て
笑う。俺は照れくさくなってこう言った。
「やーめーろーよーもーう。マジでビビったじゃんかー」
 といった展開はもちろんない。そもそも俺今日誕生日じゃないし。ただただ無言の重圧だけが俺の肩にのし
かかる。組長さんの鉄拳はさぞや痛い事だろう。ゲームの方なら俺も負けないが、現実の俺の腕はこんなにも
細く、もやしを彷彿とさせる。
 ふふ、はははは! そもそも俺なんかが、こんな美人のお姉さんと一夜を共に出来ると思った事自体が間違
いだったのだ。もうどうでもいいや! えい!
 場所が風呂だった事が幸いした。もはややけくそになった俺のへなちょこパンチを軽くかわした組長は、落
ちてた石鹸に思いっきり全体重をかけ、すってんころりん。バスタブの淵に頭を強打し、シャワーの水に混じ
って、真っ赤な液体が流れた。俺の胸中に、とりあえず助かったという安心感と、もしかしたら死んでるかも
という罪悪感が同時に押し寄せ、それは涙となって俺の眼から流れ落ちた。鼻水もいつからか出ている。呼吸
が出来ない。お姉さんの横顔が、色を失っていた。
「お姉さん、ここから逃げよう」

34 :No.07 綺麗なお姉さんは好きですか?7/7 ◇LBPyCcG946:08/10/12 18:23:27 ID:9UHoRDNM
 という風にはいかず、俺のパンチは軽くいなされ、見事俺のアゴに組長のカウンターが決まった。意識が吹
っ飛び、目の前が暗転する。
 ……ちゅんちゅん、ちゅんちゅん。小鳥の声が聞こえる。ここが天国? と思いきやベッドの上だ。今は朝。
あれ、お姉さんは? 俺はベッドから飛び起きた。なんだ、夢か。それにしても嫌な夢だった。時計を見ると、
もうとっくに登校する時間は過ぎてる。いけね! 今日も遅刻だぁ!
 そう易々と夢オチとはいかず、俺が目覚めたのはどこかの倉庫だった。全裸のまま手足を縛られ、ドラム缶
にいれられている。
「お目覚めかい? まあお前も災難だったな。組長の女に手を出しちまうなんてよ」
 明らかに「ヤス」みたいな名前の人が、俺をドラム缶の上から覗き込んでいた。全身がいたい。骨も折れて
る気がする。言葉を発しようにも、口の中まで痛い上、猿ぐつわをはめられている。
「んー、お前どっちがいい?」
 山で、いや海で、もうどっちだっていいよそんな事。
「コンクリート2種類あるんだけど」
 そっちかよ。と心の中で人生最後のつっこみを終え、コンクリートの準備が始まった。
 もはや絶対絶命かと思ったその時。遠くからサイレンの音が聞こえた。
「やばい! 警察だ。ずらかれ!」
 た、助かった! こいつらはきっと何か他にも悪事を働いていたのだろう。やっぱり悪は滅び、正義は救わ
れるのだ! ……なんて事も無く、準備は着々と進んでいる。
 助けてくれ! 俺は心の中で念じた。実は俺は少年エスパーで、秘められた超絶サイコパワーが覚醒しても
いいし、突如このヤスが慈愛の心に目覚め、やっぱり俺がかわいそうだからって言って助けてくれたっていい
! 何でもいいんだ! ○ボタンを連打して、ピンチの俺を救おうっていうミニゲームが始まってくれ! い
きなり回想に入って、俺の生い立ちとか紹介してくれてもいいから、とにかく俺を助けろ! ヘルプミー! 
せっかく今週は「制限なし」なんだから、何やったっていいだろ! 助けてくれよ!
 あ! 俺は自分で吐いた言葉に気付いた。そうだ制限が無いんだ。制限がないという事は、この手があった。
助かるかどうかは分からないが、賭けてみる価値はある。俺は心の中、あらん限りの大声でこう叫んだ。

続く!






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