【 親友 】
◆IL7pX10mvg




16 :No.04 親友 1/3 ◇IL7pX10mvg:08/12/07 11:16:59 ID:f3MEEGs/
 いじめを受けたことがある。
 もともと暗い性格だったので、小学校に入ってすぐにクラスで浮いてしまった。臭いとか気持ち悪いとか言わ
れるのは日常的なことだったし、死のうとしたこともあったと思う。
 四年になる時にクラス替えをして、いじめグループの中心とは別のクラスになったけれど、浮いているのは相
変わらずだった。
 きっと、誰かと仲良くなることを諦めていたんだろう。誰も話しかけて来ないから、わたしから話しかけるこ
とをすることもなく、毎日ただ学校に行くだけで一年が終わっていた。
 そんなわたしを助けてくれたのが、五年になってすぐに転校してきたアキだった。
 彼女が発する「おはよう」の声は朝日そのものように暖かくて、その頃のわたしにとってどれだけ救いになっ
たかは言うまでもないと思う。
 それでも、わたしがまともにおはようを返すのには少し時間がかかったけれど、それからわたしたちはすごい
スピードで仲良くなって、今までずっと一緒に過ごしてきた。
 そんなアキが、学校を休んだ。
 寒くなってきたし風邪でも引いたのかもしれないなと思っていたけれど、ホームルームの時間に担任の須藤先
生が
「誰か芹沢さんから欠席の連絡受けてませんか?」

17 :No.04 親友 2/3 ◇IL7pX10mvg:08/12/07 11:17:23 ID:f3MEEGs/
 と、少し焦ったような顔で聞いてくるくらいだから、きっとまだ連絡がつかないのだろう。
 彼女は今までズル休みなんてしたことはなかったし、とにかく理由がわからないから必要以上の不安を感じて
しまう。
 一度想像をし始めるともう止まらない。真面目なアキのことだから風邪なら重いんじゃないかとか、もしかし
たら何かあったかもしれないとか、とにかく嫌な方に考えが向いてしまって抜け出せなくなる。
 当然授業には集中できなくて、暗い気持ちのまま窓から見下ろすと、ちょうど木枯らしがさらさらと落ち葉を
運んでいくところだった。聞こえないはずの小さく乾いた音が聞こえるようで、不安なわたしをさらに心細くさ
せた。
 そんな空虚のまま放課後になり、すぐに学校を出発してアキの家に向かう。
 一人なのがいけないのか不安のせいなのか、わたしは少しためらっていた。
 確かにわたしは彼女に救われた。けれど、わたしの卑屈な心は少しばかり残っている。
「わたしなんかが助けになれるのか」
 そういう卑下する思考が溢れて、重くのしかかってくる。
 でも今は行くべきなのだ。アキには本当に感謝しているから、不格好でもそれを形にしたい。

18 :No.04 親友 3/3 ◇IL7pX10mvg:08/12/07 11:17:49 ID:f3MEEGs/
 うんと頷いて、踵を踏みつぶしたままだった靴を履き直し、走った。
 チャイムを鳴らすと、アキのお母さんが応対してくれ、すぐに部屋に通された。
「いらっしゃい」
 そうわたしを迎えた彼女は寝間着姿でベッドに腰掛け、とろんとした目をしてい
た。
 聞けば今まで寝ていたらしい。朝はかなりあった熱もすっかり引いて、明日は学校に行けるかもということだ。
「昨日の夜、今日の朝になるかな、悪い夢をずっと見ちゃって」
 全く寝付けなかったらしい。それが金縛りに会う夢で、苦しかったようだ。
「だから、寂しかったの。来て貰えてすごく嬉しい。ありがとう」
 その瞬間、わたしの頭に電気が走って、絶頂にも似た感覚がびりびりとわたしを痙攣させた。
 来てよかった、間違っていなかったと、叫び出したい衝動を手で抑え、しばらくただ下を見た。
 わたしたちの今までのことが思い出される。おはようから今まで全部を。
 そうやって私が黙っていても、やっぱりアキは待っていてくれていた。そんな心配りがとても嬉しくて、本当
に友達になれてよかったと思う。
 そしてわたしは、そんな優しさをもう一度噛み締めてから、最高の笑顔でそれに応えた。



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