【 (8.8人の鬼たち)と巨大な組織の私たち 】
◆/sLDCv4rTY




2 :No.01 (8.8人の鬼たち)と巨大な組織の私たち 1/1 ◇/sLDCv4rTY:09/08/17 21:58:24 ID:XR13q++l
 私たちは色のように知っているのだ。赤が赤色であるように、しかし、鬼は人間である
と。鬼とは、その身体をいつでも薄い二枚に分けて、何度も剥がしくっつけることができ
る人間のことだ。私たちの先輩がたはそう定義している。私たちは同じ問題意識を持つ人
から成る集団の一つで、膨大な研究のうちの一つが鬼のことの、例えば天国のように
巨大な組織だ。私たちは大きすぎた。私たちは、鬼と、複雑で多色な関係を築きたいと考
えている。鬼は小さいのだ。鬼は、私の大きな研究に、時に、人体の腕のような邪魔で私
をイラつかせる。時々、腕のような邪魔の先での暗がりに、鬼達の白い歯が見え隠れして、
いろんな場所で僕を恐がらせるのだ。
 ふ、と。よる呼吸をしながら風呂場の近くで思索をめぐらせていると、ときどき、私の
鼻奥から後ろ15cmあたりにまるい空洞ができたように感じる。その空白がいやで、僕
はそこでビー玉をくるくる転がしながら、私の論文が、鬼に、無残に改ざんされているの
を感じている。邪魔されている。そして、回る青いビー玉の表面に白い歯が薄く映るのを
かんじながら、それを私は一生きづけないんだと分かる。論文を推敲しても、その改ざん
をずっと気づけないんだと分かってしまって、すごく悲しくなるんだ。
 天国のようにおおきな組織が存在し、別に、月を従えた世界がある。そして、僕と、鬼
が存在している。僕の重い頭には、月球を生き写した空洞の球状が存在し、そこに球体の
ビー玉が青く転がっている。その半透明な表面に小さく白い鬼の歯が映り、そしてそれは
空洞から逆に僕を噛み壊していく為に存在しているという。
 鬼は、アメーバのように分裂して八人になる。“繁殖期”二枚に鬼が自然に剥がれていく
と、切断面にかわいらしい子鬼のデフォルメマークがただ繁茂しているのが見える。鬼が
この世界で生きていける最大の数は8人と決められている。また、月では0.8人しか生
きられない。
 さて、僕を二枚に剥がしたとき、つるつるの切断面に殖えている眼の無い子鬼達。定期
的に、それらをゴミ箱にざあざあ捨てて、僕は0.2人の人間としてやっていこう。腕も
脚も胴も、定期的に無い僕は、いつも風呂場のよこで残りの僕が回復するのをまっている。
二つまるい眼を瞑る。



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