【 津軽頂上決戦!大斜陽族グッド・バイ! 】
◆O8W1moEW.I




18 :No.06 津軽頂上決戦!大斜陽族グッド・バイ! 1/3 ◇O8W1moEW.I:09/09/13 23:40:21 ID:Cue8CFdd
「また人間にやられておめおめと逃げ帰って来たか、二十世紀旗手よ」
 大斜陽族四天王の一人、ダス・ゲマイネは、体中ありとあらゆるところに旗が刺さっているフラッグ怪人・二十世紀旗手に、そう冷たく言い放った。
「は、旗色が悪くなったのでございます……どうかお許しを……」
 二十世紀旗手は跪き、ふかぶかとその旗でできた頭を下げた。が、必死の懇願もむなしく、四天王達はそれを冷ややかな目で見つめるだけであった。
 そのうちに、四天王の一人ヴィヨンの妻が、二十世紀旗手に向けて歩き出した。そして何を思ったのか、ヴィヨンの妻は着物の裾を自らの胸のあたりまで引っ張り上げ、己の陰部をその場にさらけ出した。
「アンタ、終わりだよ」
 ヴィヨンの妻は、股を二十世紀旗手の頭上にくぐすと、すぅっと息を吸い込んだ。
「ど、どうか、それだけは……!」
「アーッハッハッハ!」
 その瞬間、ヴィヨンの妻の股間から、大量の尿があふれ出した。大斜陽族は、男も女も立って小便をする習慣があるのだが、ヴィヨンの妻はその小便が溶解液になっており、その能力を使って怪人の処刑係を務めているのだ。
 尿が止まると、すでにその場に二十世紀旗手の姿は跡形も無くなっていた。
「ああ、我が大斜陽族の切り札、二十世紀旗手でも勝てないとは……もう終わりだ、死のう……」
 そう言い残して、玉座の横を岩を噛むように流れる急流の人工川へ飛び込もうとする大斜陽族のリーダー・人間失格。慌てて、それを四天王の一人、きりぎりすが止めにはいった。
「キキィーッ! 人間失格様、どうかお考え直しください! たった今、着物が一反送られてきましたキィー!」
 人間失格は、その着物を見るやいなや途端に血相を変えた。麻でできた夏物の着物は、最強の怪獣を作り出すために必要なキーアイテムだったからである。
「どうにか、なる……!」
 そう人間失格がつぶやいた。
「パンドラ! この着物を、箱の中に入れるんだ!」
 四天王の一人パンドラは、箱の中から怪物を生み出すのを得意としていた。手渡された着物を箱に入れると、パンドラは呪文を唱えた。
そのうちに、箱はギラギラと玉虫色に発光をはじめた。次第に箱は膨張し、中から膨れ上がってくる体積に耐えきれず壊れてしまった。
箱が壊れてもまだそれは膨張を続け、大斜陽族の面々を次々に押し潰し、大斜陽城も破壊されてしまった。
最終的に体長二百メートルほどになったその怪物は、人々によって俊足怪獣メロスと名付けられた。メロスは一路、日本に向かった。

19 :No.06 津軽頂上決戦!大斜陽族グッド・バイ! 2/3 ◇O8W1moEW.I:09/09/13 23:40:42 ID:Cue8CFdd
「申し上げます! 申し上げます! 隊長、あいつは酷い! 厭な怪獣です、悪い怪獣です。ああ。我慢ならない。生かして置けねえ!」
「うるさいっ! せっかくの、目をさます時の気持ちが最悪よ!」
 隊長と呼ばれた女生徒は、突然駆け込んできた男を一喝した。
この女生徒、見た目はどこにでもいるただの女生徒である。だがその実態は、対大斜陽族防衛チームのリーダーでもあるのだ。
「話は大体分かったわ。とりあえず富士周辺に防衛ラインを敷いて、それから――」
その時、ラジオから流れてきた臨時速報が、女生徒の耳に入った。
「現在、俊足怪獣メロスは関東に接近しており、なお日本列島を北上中。富士周辺では月見草に甚大な被害が出た模様です」
「うそっ!? なんて速い怪獣なの?」 
 女生徒は、メロスが予想以上のスピードで日本列島を蹂躙していることを知り、驚愕した。
「準備にかかる時間とメロスの速さから考えると、本州は諦めるしかないわね。ならせめて、北海道にだけは上陸させるわけにいかないわ! なんとしても本州最北の地で、奴の動きを止めるわよ! 決戦の地は津軽。プロジェクト・HUMAN LOST、発動!」

                     ◆

 だが、津軽に配備された最新鋭の兵器でもってしても、メロスの俊足を止めることはできなかった。あまりに早すぎて、攻撃が当たらないのだ。それに、隊長である女生徒が、攻撃目標であるメロスを直視できないことも一層連携の乱れに拍車をかけていた。
「だ、だって、あの怪獣裸なんだもーん!」
 人間失格から与えられた麻の着物を最初は着ていたメロスだったが、あまりの速さからくる摩擦で、その着物もいつの間にか焼け焦げてしまっていた。成熟した男性の裸体は、いつか王子様が迎えに来てくれることを信じているような夢見る乙女には、あまりに刺激が強すぎた。
 結局、津軽防衛ラインは安々と突破されてしまった。メロスは海岸に向かった。海の向こうには、北海道の大地がもうはっきりと見えていた。女生徒は、ただその海岸で、メロスが通り過ぎていく様を見届けるしかないように思われた。
 その時、女生徒の目に、一人の男が飛び込んできた。
「ちょっと、そこでなにやってるの!? 避難命令が出てるのよ! 早く逃げなさい!」
 男は、大工だった。名を佐々木と言う。どうやら、小さな小屋を作っている最中であった。


20 :No.06 津軽頂上決戦!大斜陽族グッド・バイ! 3/3 ◇O8W1moEW.I:09/09/13 23:41:18 ID:Cue8CFdd
「嬢ちゃん、そうはいかねえ。俺にも男の意地ってもんがあらぁ! 大工ってもんは、例え雨の日も風の日も、依頼された家を作りつづける。そういうもんでぃ。
俺は、この家と添い遂げる覚悟がある。分かったら嬢ちゃん、早くそこをどくんだな。嬢ちゃんも一緒に、あいつに踏みつぶされちまうぜ」
 男の鉄の意志の前では、女生徒はどうすることもできなかった。
 地響きと共に、メロスが男に接近してきた。男が踏みつぶされるまであと数百メートル、あと数十メートル――その瞬間、男は甲高く釘を小屋に打ちつけた。辺りには、釘と金槌の当たる音が軽妙なリズムで鳴り響いた。
――トカトントン、トカトントン
 すると、突然さっきまでの地響きが、ぴたっと鳴りやんだ。
 眼を伏せていた女生徒も、何事かと驚き、はっと顔を上げた。そこには、まるで全てのやる気を吸い取られたかのように呆然と立ち尽くすメロスの姿があった。
 女生徒も大工の男も、その様子に呆気にとられたが、女生徒はすぐに一つの可能性にたどりついた。
「そこの大工! そのまま小屋を作りつづけなさい! 早く!」
 言われるがまま、また釘を打ちつける大工。
――トカトントン、トカトントン
 メロスは、体中の力が抜けたかのように、突然ぐらぐらと揺れ始めた。女生徒は確信した。メロスの弱点は、この釘を打つトカトントンという音なのだと。
――トカトントン、トカトントン
 メロスは完全に己の体を支える力を失い、ぐらりと後ろに倒れた。ズシーンという音と共に、凄まじい地響きが到来した。
「やったあ!」
 ここに、人類の勝利が確定したのであった。

                    ◆

 メロスを倒した人類は、いつの間にか大斜陽族が壊滅していたことも知り、ついに世界に平和が訪れた。
人々は、久しぶりの平和を自由に満喫していた。だが、そんな日々も長くは続かなかった。
「きゃああああ!」
 闇を切り裂く、突然の女の悲鳴。
駆け付けた警官は、女から信じられない話を耳にした。
彼女の家の障子が、大量の男性器の群れに突然突き破られたというのだ。
異変を察知した女生徒は、すぐに調査を開始した。
「隊長、我々のイチモツで、事件現場を再現してみました!」
「もう……嫌……」
 次回からは、新シリーズ・大太陽族編が始まるよ。さあ来週もみんなで見よう!

                        <つづく>



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