【 標識 】
◆LBPyCcG946




16 :No.04 標識 1/1 ◇LBPyCcG946:09/11/29 22:19:09 ID:3tQO8ELy
 ただひたすらに山と山の間を走る、なんとも退屈な道だった。どこまでも続く、同じような景色にうんざりし
ながら、私は制限時速を超えて車を走らせていた。何、こんな所で点数を稼ぐ警察などいるものか。
 道の右に標識を見つけた。『制限時速三〇km』。少なくともこの国では、標識の無い道では、制限時速六〇
kmと決まっていたはず。こんな田舎道で随分と速度を落とさせる物だ。当然、私は従わない。
 そこから少し走ると、今度は「制限時速二〇km」という標識が見えた。先ほどよりもスピードを落とせ、と
いう意味だろう。誰かのいたずらか? とも思ったが、それにしては、意味が分からない。
 もしかしたら、ここから先に少し危険な道になっているのかもしれない。そう思い直し、私は少しだけ車の速
度を緩めた。次に見えたのは、「制限時速一〇km」の標識。いよいよ何か危険な物が、この先にあるのかと、
私は身構えた。ハンドルを握る手が汗ばむ。今更ながら規則を守り、スピードを落とし、ノロノロと走る。
 次に見えた標識に、数字は書かれていなかった。代わりに描かれていたのは、右を指差している手の絵。見た
ことの無い標識だ。
 反射的に、私は車の窓ごしに右を見る。次の瞬間、何の変哲もない山が続いていた景色に、ぽっかりと穴があ
いた。そこにあったのは、美しい湖だった。
 波一つ立たない透明な水面に、山の向こう側からの日差しが色をつけ、枯れ木が周りを囲んでいた。余計な物
が何一つとしてない、調和のとれたその景色に、私は思わず見とれてしまった。
 一瞬だけ見えた小さな秘密の湖は、やがて再び山に隠れた。前を向くと、「制限時速六〇km」の標識。その
横に小さく、「楽しいドライブを」の文字が添えられていた事に私は気づいた。





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